ちびりちびりやります。
長い目で見守っておくれ
| ド ビ ュ ッ シ ー の 生 涯 |
| ド ビ ュ ッ シ ー の 生 涯 |
| 第 一 章 | |||
こうじちゅう・・ |
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1 - 2．こうじちゅう・・
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フランス近代音楽史に燦然と輝く大音楽家クロード・アシル・ドビュッシー（Claude
Achille Debussy）がこの世に生を受けたのは，1862年８月22日。彼の両親がパリ近郊のサン＝ジェルマン＝アン＝レー（Saint-Germain-en-Laye）へ転居し，オ・パン通り（Rue
au Pain）38番地にある三階建てアパートの一室に居を構えて間もなくのことである。午前４時半，ランプの明かりに照らし出された嬰児ドビュッシーは，真ん中から二つに分かれた，奇妙な額の持ち主であった1)。妹にあたるアデル＝クレマンティーヌ（Adèle-Clémentine）が生まれたのは，それから11ヶ月後のことである。
ドビュッシーの父マニュエル・アシル（Manuel Achille）は1836年５月10日モンルージュに生まれている。1861年11月30日に，母ヴィクトリーヌ＝マヌリ（Victorine
Manoury）と結婚した当時，二人は25才であった。彼らが移り住んだアパートの一階には中国雑貨の店があり，両親は前住者のマレ（Mallet）から店を譲り受けて，経営にあたった。しかし，経営は思わしくなく，窮乏の挙げ句，３年後にはマレに店を譲って，一家はサン＝ジェルマン＝アン＝レーを後にした。
1867年半ば，マニュエルは新たに日用雑貨の行商人へ転職。一家はパリへと移ってヴァンティミル通り11番地（11
Rue de Vintimille）に居を構え，さらに翌年には，サン＝トノレ通り68番地（68
Rue Saint-Honoré）へ転居した。生活は苦しく，妻は裁縫の内職をして家計を助けていたという。その後，ようやく父マニュエルが，ポール＝フランソワ・デュポンの運営する石版印刷工場に職を得たにもかかわらず，1870年７月15日にはプロイセンとフランスとの間に戦争（普仏戦争）が勃発。
1) C.E.コリガン博士は，1939年に出版した自著『隆起症状の臨床的診断（The Clinical
Diagnosis of Swellings）』の中で，こうした症例を象牙様良性骨腫（Ivory osteomata）と呼んでいる。前頭部の骨腫によって，骨が隆起し，こぶが２つ並んだような形になっていた。分かりやすくするために，当時のドイツの漫画家ルドルフ・ヘルマン（Rudolf
Herrmann）が描いたドビュッシーの肖像を添えておこう。のち彼は生涯に渡って，頭の形のコンプレックスに悩まされた。彼は20才のとき，彼は友人の画家ジョルジュ・ロシュグロース（Georges
Rochegrosse）へ依頼して，前頭部の形を隠すような髪型へ整髪するようになり，その後生涯に渡ってその髪型で過ごしている。Lockspeiser（1962）は，彼の母方の祖父が梅毒による神経麻痺のため自宅で亡くなったことや，1873年に生まれた末の弟ウジェーヌ＝オクターヴが髄膜炎のため４才で世を去ったことに触れながらも，両者がドビュッシーの骨異常と関わりがあった可能性はないと指摘している。ただし，弟の死因である髄膜炎の発症因子には梅毒も含まれることから，母方の祖父の死と弟の死には因果関係があったかも知れない。