さあ聴こう!ドビュッシー。
〜手軽に一枚。各ジャンルの取っ掛かり盤

さらに詳しく「この1曲のお薦め盤を知りたい」という方は,こちらまで・・・。


管弦楽の「まず一枚」

★★★★★
"Orchestral Works vol. 1 : La Mer / Nocturnes / Prélude à l' après-midi d'un faune"(Denon: CO-78774)
Emmanuel Krivine (cond) Orchestre National de Lyon : The Nederlands Kamerkoor Women's Choir
ドビュッシーの管弦楽作品の中でも特に有名で録音も多いのが,この三部作。それだけにこの三部作の推薦盤を見れば,印象派を片手間にしか聴かないわが国の批評家のお里も露骨に露呈してしまいます。この盤の推薦として良く挙がる「アンセルメ」,「マルティノン」は,どちらも半世紀近く前の音源。前者のオーケストラなんか酷いものです。かつて『牧神』にはまってしまった私は,何も分からぬまま批評家のご託宣に従って,それら数多い巨匠盤も全て買わされてしまいました。こんな無駄はいけません。悔恨を以ってこの三部作に限っては断言します。このクリヴィヌ盤を安心してお求めください。確かに細かいことを言えば弦楽パートに若干肌理の粗いところがなくもありません。しかし,それを補って余りあるのが,魔術的なクリヴィヌのタクトと,微睡む午後の夢心地をそのまま捉えたかの如く,異様に個性的な集音。『夜想曲』,わけても「シレーヌ」の出来はもう空前絶後の素晴らしさ。もはや神懸かりの域に達していると言っても過言ではないでしょう。古今東西あらゆるドビュッシーの中でも間違いなく最高と断言します。その他の演奏も最上級。間違いなく新時代を代表する傑作盤です。この21世紀に相も変わらずご大層な古盤を持ち上げる批評家なんぞを信用するくらいならぜひこの盤を 。後悔させません。なお,ジャケットの盤は最初に出た当時のデザインですが,最近この盤は廉価盤化されました。未曾有の名演が,何と1000円!
ピアノ曲(全集)の「まず一枚」

★★★★
"Complete Piano Music vol. 1 :
24 Préludes / L'Isle Joyeuse / Images Livre 1 & 2 / Estampes / Children's Corner / Pour le Piano / Deux Arabesques / Mazurka" (Philips : 438 718-2)

Werner Haas (piano)
オーストリアのピアニスト,ウェルナー・ハースは,このドビュッシー全曲録音とラヴェルの全曲録音で一躍次代を担う若手のホープとして騒がれたピアニストでしたが,その後あっけなくこの世を去ってしまったため,現在では随分と割を食っているのではないかと思います。クラシックの世界には「まず一枚なら同国人の演奏で」という半分本当,半分迷信が頑固に幅を利かせており,そんな理由もあってか,すっきりとした直線的なピアニズムを持ち味にするハースは,フランス人で似たところのあるベロフなどの影に隠れた格好になっています。勿体ない。「ウィーン三羽ガラス」といわれたグルダやギレリスらと同様,明晰で技巧闊達。少々表情の深みに乏しいところがあるものの,めざましいテクニックとフレッシュな感覚の冴えわたるピアニズムは清明。特にタッチの美麗さに掛けては,ベロフなどより遙かに上を行くものと思います。白眉ともいうべき第2巻の『練習曲』や,本巻『ピアノのために』,『子供の領分』など,どれもすっきりとまとまった水準以上の出来映えで駄演なし。もし,取り敢えず質のいいピアノで全集を揃えたいなら,これをお求めになるのが宜しいかと思います。なお,全集は各2枚組の2巻からなります。合計6000円ほどでドビュッシーのピアノ全集ができあがります。最近はこの盤からテキトーにコンピした抜粋盤も数多出ているようです(個人的には薦めない:笑)
器楽・室内楽の「まず一枚」

★★★★★
"Les Trois Sonates :
Sonate pour Flûte, alto et Harpe / Sonate pour Violon et Piano / Sonate pour Violoncelle et Piano" (Accord: 205152)

Pascal Roge (piano) Pascal Bernold (flute) Bruno Pasquier (viola) Frédérique Cambreling (harp) Régis Pasquier (violin) François Guye (cello)
ピアノ曲と歌曲に御執心だったドビュッシーの室内・器楽作品は,多くありません。しかし最晩年になってドビュッシーは,矢継ぎ早に3つの異なる楽器のためのソナタを作曲しました。本アコール盤はあまり有名ではありませんが,その中でひとつをとなれば間違いなく筆頭の3本に入る,名演のひとつではないでしょうか。各人,譜面を見て弾いていながら,実に柔和な佇まいがあり,軽やか。しなやかな即興性を失わない。ドビュッシー自身が印象主義への回帰を掲げた『フルート,ヴィオラとハープのソナタ』は中でも白眉ともいうべき美演。古楽的な佇まいの中に,エキゾチックな神秘性をたたえた原曲の持ち味が見事に最大化されている。成功の最大の立て役者は,独奏者としてはもう一つのロジェの見事な伴奏でしょう。プーランクのソナタ集といい,この人はソロ演奏家としてやるより,伴奏者として活動するほうがいいと思うのですが・・・。彼が胸を張って伴奏の道を選ぶにはやはり,伴奏者の楽壇における地位が向上しなくてはならないのでしょうね。なお,この盤も,ジャケットとCD型番こそ変わったものの,再発されました。輸入盤点にいけば1800円ほどで簡単に買えます。
ピアノ曲(抜粋盤)の「まず一枚」

★★★★☆
"Oeuvres pour Piano II :
Images, 1'ere serie / Images, 2'eme serie / Rêverie / Deux Arabesques / La plus que Lente / 5 études / Masques / L' îsle Joyeuse" (EMI: TOCE-3022)

Samson François (piano)
奏者のフランソワという人は,ラヴェルとも懇意だったマルグリット・ロン最後のお弟子さん。酒も煙草も大好きで,演奏は稀に見る天才肌。録音は殆ど一発取りで,気が乗らないと聴くに堪えない演奏も平気でするムラッ気の多い人でした。しかし,ひとたび興に乗ったときの演奏からは,得も言われぬ生気と霊感が噴出し,およそ譜面を読んでいるとは思えない高度な即興性が表出します。そんな破天荒な生き方が祟って,彼は1970年に入ると同時に,あっけなく心臓発作で他界してしまうのですが,幸運にも最晩年に,ラヴェルとドビュッシーの録音をまとまった形で残していってくれました。先に録音されたラヴェルに比べ,死期の近いドビュッシーの出来にはかなりのムラがあるのも確か。しかし,この第2集は素晴らしいです。特に『映像』の神懸かり的な閃きに溢れた演奏は,およそ誰にも真似できない孤高の境地へとたどり着いているものと思います。おまけに有名人=いつでも買える(笑)。気になさるのは「CCCDかどうか」だけで充分ですよ!
歌曲の「まず一枚」

★★★★★
"Mélodies :
Mandoline / Beau Soir / Ariettes Oubliées No.4, 5 / Fêtes Galantes II / Deux Chansons de Charles d'Orléans / Trois Ballades de François Villon / Le Promenoir des Deux Amants" (EMI: TOCE-1584)

Gérard Souzay (baritone) Dalton Baldwin (piano)
ドビュッシーは沢山の歌曲を遺したので,それを揃えるとなると,4枚組ほどになってしまいます(余談ながら,スゼーとボールドウィンのコンビが,当時のトップ歌手数名と協力して完成させた歌曲全集が,EMIに残されています)。彼の歌曲はピアノ曲と並んで,作曲者の内省的な曲書きの流儀が色濃く出たもので,「夢」や「月の光」のドビュッシーをイメージして手にすると,一聴あまりに茫洋としていて難解なのに戸惑うことになるのではないでしょうか。そこで,まずはこの抜粋盤を。「ビロードの美声」と言われた名バリトン歌手,ジェラール・スゼーが残したドビュッシー歌曲集からの抜粋盤です。かつてセラフィムから出たこの抜粋盤は1500円で買えました。選曲も良いと思います。ただ,今はどうなってるんでしょうか・・。今も出てるのかな?

(Revised: 2005. 2. 10 USW Standard Time)






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